働く2021.11.20

〈HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI〉宇宙編集部特別企画

日本仕事百貨・ナカムラケンタが思う、未来の宇宙の働き方。

text: Kenta Nakamura

※本記事は、2021年12月10日から開催するイベント〈HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI〉に先駆けて、オープニングセッションに登壇する日本仕事百貨のナカムラケンタさんに、「これからの働き方と未来の宇宙の仕事」をテーマに寄稿いただいた宇宙編集部の特別企画です。

オープニングセッションにはナカムラさん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の菊池優太さん、宇宙開発や宇宙ビジネスを専門とするライター・井上榛香さんが登壇。「働き方」について考え続けるナカムラさんが聞き手となって、宇宙業界で働くお二人に現在の宇宙業界・宇宙ビジネスについて伺いながら、それぞれの視点から、これからの宇宙の仕事や働き方について意見を交わします。

※宇宙編集部では、イベント参加企業のほか宇宙に関わる企業の求人情報、トークセッションのレポートなどを掲載するイベント特集ページを12月9日にオープンします。

 

 

求人の取材で、人口が100人ほどの口永良部島を訪れたことがある。数年前に爆発的な噴火を起こした島と言うと、憶えている方もいらっしゃるかもしれない。

 

東京から飛行機で鹿児島空港へ。そこからバスで鹿児島港に向かい、高速船で屋久島へ。さらに町営船に乗り換えて、西へ1時間40分。

 

だんだんと南洋に浮かぶ島が見えてくる。山頂からモクモクと噴煙があがっている。船が港の中に入ると、建物がいくつか見えるものの、ほとんど人工物が見られない。島のほとんどが深い森に覆われている。島の中には小さな郵便局と、2軒の商店、それにガソリンスタンドに、小学校と中学校。共同浴場があるので、お風呂がない家もあるそうだ。

 

人口の少ない土地であろうとも、一定の人数が暮らしていくならば、必要最低限の役割というものが生まれる。それは100人ほどが暮らす口永良部島も同じ。

 

たとえば、ある方は環境省の仕事として山道の整備をしたり、芋焼酎の芋を栽培したり、お土産物として喜ばれる貝細工の職人としても働いている。食料も調味料とお米以外は自分で調達する。魚釣りをして、たくさん釣れたらお隣さんにお裾分け。すると野菜になって返ってくる。鹿を獲ったら、自分たちで捌く。島内を歩いている鹿を見て、子どもたちが「おいしそう」と話していたのは印象的だった。さらに自分の家は自分で建てるのが当たり前。この島では、自分で家を建てることができたら1人前なのだ。

 

100人が住む島で暮らしていくために、必要な役割は100以上ある。水道も電気も自分たちで維持管理する。お金を払ったら誰かがやってくれるわけではない。一人何役も担わなくてはいけない。どうしても兼務できないような、たとえば歯医者さんのような役割は、ときどき島にやってきてくれる。そうやって、みんなでやり繰りしながら島の社会を維持している。

 

人口が減っていく社会では、みんなで役割分担しなければいけない。そういう土地はこれから増えていくように思う。たとえば、高齢化で飲食店がなくなり、宿も食事が出せなくなって素泊まり宿ばかり増えたある島では、せっかく観光客が訪れてもカップラーメンしか食べられないそうだ。なんとか役割分担しながら、コミュニティを維持していかなければいけない。その場所で生きていくのだから。それは地球を離れても同じ。

 

これから人類が生きていく宇宙でも、きっと小さなコミュニティからスタートすることになる。開発黎明期には、口永良部島のように一人何役も担わなくてはいけない。となると、宇宙の求人では、一人何役も担えるような人が必要とされるかもしれない。

 

昼は野菜工場で野菜を栽培する。星で調達した材料を使って家も建てる。ときどき消防訓練にも参加する。夜はバーテンダーになって、夜空に浮かぶ地球を眺めながらお酒をつくる。休日は仲間の結婚式で立会人となる。宇宙で働くには、一人で何役もこなさなくてはならない。大変な仕事のようだけれど、なんだか面白そうと感じたら、宇宙の求人を探してみるとよいかもしれない。

 

〈HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI〉は、今、 宇宙ビジネスの拠点として注目される街・日本橋で、宇宙の仕事と“出会う“ことから、実際に“働く“ことまで、つながることの出来るイベントです。宇宙飛行士から、地球と宇宙を股にかけるパラレルワーカーまで、宇宙に関わる職種や人を、トークセッションや展示を通して紹介します。ナカムラケンタさん(日本仕事百貨)、菊池優太さん(JAXA)、井上榛香さん(宇宙ライター)が登壇するオープニングセッションは12月10日(金)18:30-19:30に開催予定。詳細はイベント特設サイトを要確認。