特別連載2021.11.12
photo & text Yozo Hirano
出発まであと85日。
ハリケーン「ニコラス」はヒューストンを夜中のうちに過ぎて行った。それでも朝の授業はホテルからのリモートとなった。
今日の授業はISS内のコントロールパネルの操作方法について。インターフェースは少し違うけど、スターシティで学んだ通り、USOSのそれも機能は全てロシアセグメントのものと同じだった。授業内容を理解できていることに少しの満足感を覚える。
午後からはFlight Surgeonと呼ばれる宇宙飛行士専門のドクターに会いに行った。とても感じの良い女性の先生だけど、メディカル用語が飛び交って英語で何て言ってるかほぼ聞き取れなかった。
聞き取れなかったけど、宇宙滞在が身体のいたる部位に何かしらの影響を及ぼす可能性があることだけは理解できた。筋肉の減退、視力の低下、耳鳴り、鼻詰まり、便秘などなど。どうやら宇宙は、人間に適した環境とはまだまだ言えなさそうである。
中でも一番嫌な情報が、75%の人に宇宙酔いは起きるらしい。メディカルチェックで受けた回転椅子を思い出すと、今から憂鬱でしかない。
それともうひとつ。フライト中はトイレに行くのが難しいため、念には念を入れて大人用のオムツを履くらしい。ホテルに戻ってから、実際に尿漏れしないか、ソユーズの中と同じ体勢になってテストした。初めてオムツで用を足したけど、なんとも言えない微妙な感覚。できれば本番では使用しなくて済むようにしたい。
ドクターとのミーティングの後はメガネを作りにNASA近くのアイクリニックへ。ショッピングモールの隅にあり、本当にこんなところで大丈夫かと疑ったけど、どうやらここで合っているらしい。その証拠にたくさんの宇宙飛行士の写真とサインが飾ってあった。多くの宇宙飛行士がここで宇宙滞在用のメガネを作るらしい。
前澤は事前に日本でメガネを作ってきていたけど、ドクターの精密な診察もあり新調することにした。僕は裸眼のままでもギリギリ問題ないという診断だったけど、軌道上では太陽や地球が明る過ぎるためサングラスが必須らしく、せっかくなのでほんの少し度の入ったサングラスを作ることになった。
目が良いのだけが取り柄だったけど、35年間使い込んできた視力はやっぱり衰えていた。初めて見るレンズ越しのクリアな世界に感動した。これで宇宙から地球を眺めることになる。
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1985年、愛媛県生まれ。2007年にZOZOTOWNを運営する株式会社「スタートトゥデイ」に入社、フルフィルメント部門の責任者として従事。現在は前澤友作氏のマネージャーと、「スペーストゥデイ」のプロデューサーを務める。