特別連載2021.12.07

平野陽三、宇宙へ行く。vol.76 12月6日:打ち上げ成功を願う映画鑑賞会。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと2日。

打ち上げまで、あと2日。

 

今日は、本番当日の朝から打ち上げまでの準備とイベントのタイムスケジュールを確認した。明日は16時に軽い夕食を食べ、18時に寝て、夜中の2時に起きることになる。それから諸々の準備とイベントを行って、6時前にホテルを出発する。ロケットも発射台に立ち上がったし、当日のスケジュールを目で追いながら、さながらローンチ2日前といった雰囲気が出てきた。実感のいつまでも湧かない僕でも、今この日記を書いている48時間以内にはソユーズの中にいて、地上数百キロに到達していることくらいは計算できる。

 

フィジカルトレーニングも今日で最後。ここまできて怪我でもしたら大変だということで、いつもよりゆっくりめのランニングと軽いウェイトをして、ストレッチだけして締めた。長く続いたフィジカルトレーニングも今日で最後かと思うと、ランニングマシーンから見える外の雪景色も相まって、ちょっとセンチな気持ちになってくる。横で小木曽がバーベルを上げているのが視界の隅に入ってきたけど、日本に帰ったら小木曽と2人でジムに行くことなんて、まぁ、まずないだろう。

 

ディナーのあとは、これもロシア特有の験担ぎイベント、映画『砂漠の白い太陽』鑑賞会。映画の内容は全く宇宙と関係ないけど、その昔、事故を起こした次のフライトの宇宙飛行士が、フライト前にこの映画を見て打ち上げは大成功したというエピソードから、今日までこの鑑賞会が続いているらしい。面白くなかったら途中で抜けてもいいから、と言われていたけど、聞くとサシャが大好きな映画だというので、席を立つわけにもいかず、結局最後まで一緒に鑑賞した。サシャはこれまでの2回のフライト前にももちろん鑑賞しているし、それ以外にプライベートでも何度も観ているという。何度も観ているというのに、映画の所々でクスクスニヤニヤ笑ったりして、本当に好きなんだなぁと横で見ていてほっこりした。

 

打ち上げ前日の明日は、日本から見送りのゲストがカザフスタンに入国する。その中には、僕の妻と家族もいて、無事にちゃんと来れるだろうかとか、他の皆さまにちゃんと挨拶できただろうかとか、仲良くしてもらえてるだろうかとか考えてしまって、宇宙への出発よりもそっちの方が気になってしまって、正直気が気でない。

 

でも、コロナ禍で規制が厳しい中、それでも母は地元の愛媛から、何がどうなっているかも分からないカザフスタンという異国の地まで息子の応援に駆けつけてくれる。姉は会社を休み、母と妻の引率をしてくれている。妻はもうここ数年慣れっこではあるけど、3ヶ月も家を空けている僕に文句のひとつ言うことなく、いつも笑顔で応援してくれる。本当にありがたい。ありがたいと思うけど、この宇宙への挑戦がなければ、家族にまじまじと感謝することもおそらくなかっただろうと思う。それだけでも、ここまで頑張ってきた甲斐があった気がする。

 

さて、もう深夜1時を回ってしまった。そろそろ明日に備えて寝なければ。
この日記をだらだらと書きながら、僕は深夜の日清カップヌードルを食べてしまった。

 

<次の記事>vol.77 12月7日:出発前日。

 

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