特別連載2021.11.18

平野陽三、宇宙へ行く。vol.24 10月5日:テストの日。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと64日。

早く起きてテスト勉強するつもりが、ついギリギリまで寝てしまった。夕方までびっしり詰まった訓練スケジュールを考えると、朝は出発直前まで体力をチャージしておきたい気持ちに駆られる。スターシティへ向かう車の中で、軽く復習をした。

 

テストの部屋に入ると、コミッションと呼ばれる試験官とインストラクターの計5名が待ち構えていた。手元にはスコア用紙が置かれていて、項目ごとに5点満点でスコアをつけられる。

 

今日の僕の相棒(=通訳さん)はアリス。コミッションがロシア語で質問したことを英語に訳し、僕の英語の回答をロシア語に訳して戻してくれる。つまり、テストのときは通訳さんが相棒的存在なのだ。

 

席に着いて軽い挨拶をしたあと、すぐに一問目の質問が飛んできた。ある程度どのあたりが出題されるか分かっていることもあり、一問目はほぼパーフェクトに答えることができた。と思ったけど、手前の試験官は一問目のスコアに「4」を付けるのが見えた。あれ?なにか足りなかったか。

 

解答を丸暗記して答えられても面白くないのか、コミッションは授業で触れていない内容までたまに質問してくる。これは僕が答えられないと分かっていてわざと出してくるのだけど、結果的には新しい知識としてその場で解答を教えてくれる。

 

通訳のアリスは、僕が聞き取れるようにゆっくりはっきりと訳してくれた。僕のぎこちない回答にはロシア語で色をつけて戻してくれたんじゃないかとさえ思える信頼感。

 

ありがとう、アリス。僕はなんとか試験にパスすることができた。

 

<次の記事>vol.25 10月6日:世界初、ISSでの映画撮影。

 

記事一覧はこちら

プロローグはこちら