特別連載2021.11.11
photo & text: Yozo Hirano
出発まであと86日。
NASA訓練初日は朝から大雨。というよりハリケーンがきてるらしい。Johnson Space Center(JSC)に向かう車の中で、聞いたこともないようなけたたましい音のサイレンがスマホから鳴動した。今日から明日にかけ大嵐になるそうだ。
JSCに入ってすぐにFalcon9とスペースシャトルがお出迎えしてくれた。それだけでテンションが上がる。やはりNASAはスケールが大きい。
簡単なグリーティングの後、今日の訓練はビデオカメラの講習からスタートした。カメラはCanonのXF705。今までXF305だったのを705に一新するらしい。これはキューポラをはじめUSOS(US Orbital Segment)で使用する。JAXAのKIBOもUSOSの一部なので同じく。ちなみにロシア棟でのビデオカメラはSONYのPMWシリーズを使用する。カメラをモジュールやイベントによって変更しなければならないのはちょっと億劫だけど、いろんなカメラを触れてこれはこれで楽しい。
議題はキューポラでの撮影について。ISSの象徴的な場所だけど、どうにも撮影が難しいとのこと。背景の地球が明るすぎて、逆光で人が暗くなってしまう。逆に人に明るさを合わせると背景の地球は飛んでしまう。地球も被写体も綺麗に写すにはテクニックといくつかの条件が必要なのだそう。
うまく撮れるかな、、心配でしかない。
カメラ講義のあとは、緊急時にクルーがどう行動するかの講義。ISSでの3大緊急事態は、火事、気圧漏れ、有毒ガス。一部ロシア棟とUSOSでは消化器やガスマスクなど使用する機材が違うけど、もうこれはロシアの訓練でもJAXAの訓練でも何度もやっていることなので復習も兼ねて。
緊急事態が起こったときは、仲間に知らせる、安全エリアに避難する、コマンダーやクルーの指示に従って適切に行動する、という子供でも分かるようなシンプルなことなんだけど、それを何回も何回も反復する。本当の緊急事態時には、落ち着いて行動できることがとにかく大事だということ。分かっていても、実際にエマージェンシーが起こるとパニックになることが容易に想像できる。クルーに迷惑を掛けないよう、最低限の行動知識はしっかりと頭に叩き込んでおきたい。
講義も終盤に差し掛かってきた夕方、最後の一コマを残してNASAが今日は施設を閉めるという。明日の訓練はどうなるかわからない。
ハリケーンが上陸する。
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1985年、愛媛県生まれ。2007年にZOZOTOWNを運営する株式会社「スタートトゥデイ」に入社、フルフィルメント部門の責任者として従事。現在は前澤友作氏のマネージャーと、「スペーストゥデイ」のプロデューサーを務める。