体感する2021.12.05

“宇宙式”トレーニング vol.1 脚力を鍛える。

supervision: Yoshito Kamiyama
illustration: Shoji Naoki

限られたスペースの中で過ごすという点で、ステイホームと宇宙船滞在はほぼ一緒。しかもベッドに寝たきりの人間の筋肉は、無重力の中で過ごした宇宙飛行士のそれと同じような状態なんだとか。宇宙から帰還直後の飛行士のように自力歩行が困難、とまではいかないものの、確かに「最近、体力が落ちたなあ」と感じる人も多いはず。そろそろ世間にもアクティブな雰囲気が戻りつつあることだし、ここはひとつ、宇宙飛行士のトレーニングにならって怠けた身体を目覚めさせようじゃないか。というわけで門を叩いたのが、宇宙飛行士や運用管制員の訓練プログラムを開発する有人宇宙システム株式会社

 

この『“宇宙式”トレーニング』は、運動指導をはじめとして日本人宇宙飛行士の健康管理を担当している神山慶人さん監修のもと、自宅で簡単にトライできるエクササイズを5回に渡って紹介する連載。第一回目のテーマは「脚力を鍛える」。私たちもいつかは宇宙に行くかもしれないし、今から宇宙飛行士気分で挑戦してみよう!

【宇宙飛行士のトレーニングって?】

 

早速エクササイズ開始! といきたいところだが、今回は記念すべき第一回。まずは国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の実際のトレーニング内容について簡単に知っておこう。

 

神山さん:トレーニングは大きく3つの期間に分けて考えられています。まずは「ISS飛行前」となる、ミッションアサインから出発までの約2年間の準備期間。この時期から週2回、1回2時間の体力訓練が仕事としてスケジュールされるのですが、ポイントとなるのは宇宙という特殊な環境に対応できる身体を作ること。そのため、ISSで船外活動するための訓練や、洞窟や森の中でのサバイバルなど宇宙に行くために実施する身体的負荷がかかる訓練も考慮して、訓練計画をたてるのが特徴です。そして、無事出発した後のISS飛行中期間。身体の衰えについて、宇宙での一日は臥床(寝たきり)2日分、加齢性変化の1か月分に相当すると言われています。ここでは無重力による筋肉や骨の衰えを防ぐため、ランニング時に体を押さえ付けるハーネスのような器具を身につけたり、宇宙空間での利用を想定して開発されたARED(Advanced Resistive Exercise Device)などの筋力トレーニングマシーンを使ったり、できる限り地上にいるのと同じ環境を作りながら毎日1時間半ほどの運動を実践します。これだけ運動していても、帰還直後の宇宙飛行士は自力で立って歩くこともままならない状態に。そこで重要になるのが、地上に戻ったISS飛行後。身体を宇宙へ行く前の状態に戻すため、バランス機能の回復に重点を置いた運動を中心としたリハビリを約1.5ヶ月間行います。

 

事前の過酷な訓練やISS滞在中の様子はテレビなどで度々目にするけれど、帰還後にもトレーニングが続くとは! 宇宙飛行は帰還した瞬間に無事終了、と思ってしまいがちだけれど、地球での生活をこれまでと変わらずに再スタートさせてこそ完全なミッションコンプリートというわけだ。

 

そして、その最後の任務ともいうべきリハビリの内容こそ、神山さんが私たちにおすすめしてくれるエクササイズ。

 

【脚力をつけるスクワット】

 

神山さん:地上にいる人間の身体は重力に対抗して立つために、常に意識せずとも足腰の筋肉を使っています。一方重力が非常に弱い宇宙では、その負荷もなくなり、さらに歩く必要もありません。そのため、脚力は宇宙滞在によって特に衰えやすい機能。そこで有効となるのが脚力を中心に鍛えられるスクワットです。

 

 

 

①壁に向かって両足を肩幅に開いて立ち、両手を上げる。壁との距離は足一つ分ほど。

 

②壁に両手を沿わせながら、息を吸いながら腰をゆっくり落とし、息を吐きながら直立へ戻る。このとき手を見ながら背筋を伸ばし、おしりを突き出しながら膝は90度に曲げ、膝がつま先より前に出ないように注意。

 

神山さん:一番気をつけたいのが、膝を前に出さないということ。慣れるまでは壁の前でチャレンジしてみてください。そして、一度にどれだけ多く行うかよりも、今どこの筋肉を使っているのか、自分の身体に意識を向けながら1回をゆっくり丁寧に行うことも大切。10回を目安にしつつ、自分の中で少しきついなあと感じるギリギリのところまで続けるのがおすすめです。

 

正しいフォームを守りながら挑戦してみると、脚の筋肉だけでなく、背中にも効いてくるのを感じられるはず。一つの運動で効率よく色々な部位を鍛えられるというのも、宇宙飛行士のリハビリプログラムで重要視されるポイントだ。

 

【今回のまとめ】

 

“宇宙飛行士のリハビリ”と聞くとなんだか縁遠く感じるけれど、宇宙飛行士も私たちと同じ人間。本来の身体能力をリカバリーするには、スクワットのような基本の運動が大事なのだ! 次回は「腕と背筋」がテーマ。その更新まではスクワットを続けてみよう。

 

<有人宇宙システム株式会社>

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