特別連載2021.11.30

平野陽三、宇宙へ行く。vol.53 11月9日:氷点下でのフィジカルトレーニング

photo & text Yozo Hirano

出発まであと29日。

今朝の気温は氷点下1℃。朝ホテルから出ると地面が一部凍っていて、昨日までよりも格段に寒くなっていた。今週からいよいよ寒さが厳しくなるらしい。訓練所に着くと、うっすらと雪が地面を覆っていた。ロシアの初雪にちょっとだけテンションが上がった。

 

今日のフィジカルトレーニングはさすがに屋内だろうと高を括って油断していたら、いつもと変わらず外周ランニングからスタートした。この外周ランニング、森の中を簡単に舗装しただけのガタガタのオフロードでかなり走りづらい。一周約1.5kmを今日は5周。伴走の若い宇宙飛行士のペースが速くて、すぐに息があがってしまった。足をぐねりそうな砂利道に加えて、所々にある水溜まりが凍っている。真冬には自然のスケートリンクができあがるそうで、ランニングの代わりにスケートをするらしい。

 

そして、やっぱり今日はめちゃくちゃ寒い。呼吸をするたびに冷たい空気が肺を刺してくる。なぜだかロシアの地で、小学生の頃の駅伝クラブを思い出した。少年時代の僕は、なにを目指してたんだっけ?どうせ友達とゲームすることくらいしか考えてなくて将来の夢なんてコロコロ変わってたんだろうけど、まさか将来宇宙に行くことになるとは夢のまた夢にも思っていなかっただろう。本当に人生って誰にも分からないなと、走りながら一人そんなことを考えていた。

 

5周走り終えると、汗だくになって暑いくらいだった。もうこの外周を走ることも残り数回だと思うと、もう一周くらい走っておきたい気持ちになった。そのあとは、休むことなくジムへ移動しウェイトトレーニングへ。今日はトレーナーにしごかれるらしい。

 

<次の記事>vol.54 11月10日:Lazma(ラズマ)のレクチャー。

 

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