特別連載2021.12.01

平野陽三、宇宙へ行く。vol.55 11月11日:クルードラゴン打ち上げの日。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと27日。

今日は遅れに遅れていた、NASA宇宙飛行士4名のクルードラゴン打ち上げが行われた。予定より10日以上も遅れてのローンチだっため何かあったのかと心配していたけど、さすがのSpaceXは難なく打ち上げを成功させた。

 

NASAとESAの宇宙飛行士4名は、以前この日記でも書いたように、ヒューストン訓練中にご挨拶させていただいていて、僕たちの滞在中にもお世話になる予定の方々。そんなこともあり、モスクワは朝の5時だったけど、ベッドの中からライブストリーミングで彼らの打ち上げを見守った。カウントダウンのあと、ファルコンヘビーは強烈な閃光を放って火の玉となり、夜雲の中にあっという間にで消えていった。何度見ても有人飛行の打ち上げは緊張するし、興奮する。21時間後、彼らの船は無事にISSのUS棟にドッキングした。

 

僕は寝不足な目を擦りながら、いつも通り訓練所へ。今日は軌道上で行うアクティビティのうちの一つ、ペインティングのレクチャーからスタートした。宇宙でアート作品を作ろう! という企画があり、まだ具体的に何をするか、何を描くか決まっていないけど、今日のところはキャンバスに絵の具と筆を使ってペイントするというシミュレーションを行った。

 

普通に描くだけじゃないの? と思うかもしれないけど、絵の具がISS船内で飛び散ってしまわないように、専用の透明なバッグに空気を送って膨らませ、その中にキャンバス、筆や絵の具、パレット代わりの紙やナプキンなどを入れ、そこに手を突っ込んで絵を描く。やってみたけど、これが意外と難しい。それが無重力下となれば尚更上手くいかないだろう。しかもその透明のバッグは完全にクリアではないので、絵を描く工程をうまく映像に記録することが難しそうに思われた。

 

宇宙で絵を描くのは、おそらく2009年に渡航したシルク・ドゥ・ソレイユの創設者ギー・ラリベルテ氏以降になるというから、約12年越しのペインティングになるのでこれはこれで貴重だけど、本番ではもう少しユニークなことができないかと、ただいま鋭意検討中。

 

また今日は、この「宇宙編集部」のサイトオープン日。訓練中で編集さんとも十分にコミュニケーションが取れていなかったため、本当にオープンするのかな? とさえ思っていたけど、ちゃんと予定通りにオープンした。(関係者の皆様、お疲れ様でした。)

 

9月の日記から遡って毎日更新されるみたいで、1日に複数日分の日記がアップされるということで、追いつかれないように、忘れないように、日々の記録を書き留めていこうと思う。

 

少しでも宇宙に興味が湧いたり、単純に楽しんで読んでもらえれば幸いです。

 

<次の記事>vol.56 11月12日:スターシティでの訓練最終日。

 

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