体感する2021.12.27
宇宙ビジネスの拠点として注目される街・日本橋で開催された「宇宙の仕事」をテーマとしたイベント〈HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI〉。イベント期間中にはJAXA宇宙飛行士候補生募集をはじめ、ファッション、クリエイティブ、法律、女性……などなど、あまり知られていない多様な宇宙の仕事・働き方に注目した9つのトークセッションを開催。
本記事では、4つ目のセッション「宇宙×ライフワーク | サラリーマンが隙間時間で宇宙開発?」をレポートします。
宇宙の仕事をしていなくても、宇宙に携わってみたい! という人に向けた本セッション。趣味で宇宙開発を行う民間開発団体、リーマンサット・プロジェクトに参画する広報・マーケティングを統括する理事の柳田佳孝さん、学生けプロジェクトに参画している根橋宙之さん、本業では医薬品を対象としたマーケティング・リサーチの会社で働く三好彩子さんの3人と、日本テレビで「ぐるナイ」などお笑い番組の演出プロデュースを手掛ける宮下仁志さんが登壇。ライフワークとしての宇宙に携わるという共通点以外は、全く異なるバックグラウンドを持つ4人にお話しいただきました。
こころに残ったことば
「私の触ったものが宇宙に行ったということ自体に、すごく感動した」(三好彩子)
「試行錯誤しながら、資金調達だとか、いかに低いお金で開発を進められるかというプロセス自体を楽しみながらやっている」(柳田佳孝)
「やっちゃえばよかったんだ」(宮下仁志)
「宇宙業界ではない分野でスキルを磨くことで、宇宙開発に活かしていきたい」(根橋宙之)
セッションの始まりはリーマンサット・プロジェクトの説明から。2014年に立ち上がったリーマンサット・プロジェクトは、一般のサラリーマンや学生が趣味として、本気で宇宙開発を行う団体。技術部や広報部など会社を模した部署や役職があり、さらに技術部の中でも、人工衛星や月面ローバー、宇宙服の開発、今年の募集を受けて宇宙飛行士を目指すグループなど、約1000人ものメンバーがさまざまなミッションに取り組んでいる。メンバーにはこれまで開発に関わった経験がない人や、何が手伝えるのかも分からない状態で参加する人も多い。みんなが手弁当で勉強しながら、0から開発を進めている。理事の柳田さんは「試行錯誤しながら、資金調達だとか、いかに低いお金で開発を進められるかというプロセス自体を楽しみながらやっているのが我々ですし、こうした活動を通してこそ宇宙開発の裾野が広がると思っている」と話す。医薬品のマーケティングリサーチ会社に勤める三好さんは、プロジェクトに参加した当初、宇宙開発に関わる知識や経験は全くなかったが、「私の触ったものが宇宙に行ったということ自体に、すごく感動した」と、現在はアマチュア無線の資格を取得し、打ち上げ後の衛星の運用を担当している。さらに今後打ち上げ予定の衛星開発にも参加する予定で、今回はもう少し踏み込んで関われるよう、開発の勉強もしているそう。リーマンサット・プロジェクトは素人だけで、しかも全員が本業を持ちながら、これまで2機の人工衛星打ち上げに成功している。趣味といえど、凄まじい熱量だ。そんなプロジェクトメンバーの話を聞いて、「やっちゃえばよかったんだ」と、宮下さん。宇宙に携わりたいと思いながらも、企業に所属しているがゆえ、この2年間足踏みをしていたという。しかし13年ぶりの宇宙飛行士募集など宇宙業界が多方面で注目された今年、2年間の粘りが身を結び、配信チャンネル「spaceTV」やドラマ配信「宇宙同窓会」を実施。そのほかKIBO宇宙放送局の番組演出や京都芸術大学主催の「宇宙感動体験コンペティション」でのティーチングなど、日本テレビ社員の枠を超えて宇宙と関わる仕事に携わっている。宮下さんの「宇宙の仕事」への積もる思いはトーク時間内には収まらず、用意していた資料の一部をスキップするシーンも。
4人の熱い想いが語られた後、司会の榎本麗美さんから「本業のスキルや経験は宇宙開発に活かされているのか?」という質問が。学生時代から人工衛星の開発に携わっていた根橋さんは、今年新入社員として半導体メーカーに就職した。宇宙開発を本業にしなかったのは「宇宙業界とは全然関係のない人たちが、それぞれのスキルを持ち寄って開発することで、実際に宇宙まで行ってしまう人工衛星が作れていることに衝撃を受けた。自分も宇宙業界ではない分野でスキルを磨くことで、宇宙開発に活かしていきたい」から。一方で三好さんは、本業のスキルが宇宙開発の場で活きる機会はあまりないが、逆にリーマンサットの活動で得た視点や経験が本業に良い影響を与えていると話す。
宇宙業界全体が他業種との繋がりを必要としている今、リーマンサットはこの1〜2年の間で日本全国、世界中からの参加希望者が増え、さらにその幅を広げている。「転職を考えている方もいると思いますが、職を変えないまでもちょっと宇宙開発をやってみようかって時にやれる場がリーマンサットにはありますし、リーマンサット以外にもこんな形で集まっている団体は他にもあります。気軽に一歩踏み出していただいて、合わなければやめればいいだけなので、ぜひ動いてみることを大切にしてみていただけるといいのかな」と、柳田さん。自分の趣味や生活の延長線上に、宇宙開発という選択肢が一つ増えたセッションだった。
・<HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI>特集ページ
普段は半導体メーカーに勤務する新人サラリーマン。その傍ら”趣味の宇宙開発”団体リーマンサット・プロジェクトのメンバーとして活動中。学生時代は情報処理工学を専攻。2017年より日本で初めて趣味で開発された人工衛星「RSP-00」の開発に参加。現在は自身が考案したミッションアイデアをもとに超小型衛星「RSP-02」のプロジェクトマネージャーとして”趣味の宇宙開発”を行っている。
お笑い番組演出プロデュース歴30年以上。代表作「ぐるナイ」「元気が出るテレビ」「さんま岡村特番」など。ライブ配信番組企画も。「KIBO宇宙放送局」に関わったことがきっかけで宇宙エンタメの可能性を模索中。日本テレビを超える宇宙テレビ=宇っテレを妄想している。spaceTV「日テレ宇宙アナウンサーズ」も企画。藝大でクリエイティブマインドを伝え、伝統芸能と宇宙、信仰と宇宙にも大きな関心を持っている。
大学では獣医学を専攻し、新卒で動物病院にて獣医師として勤務。その後転職し、現職のリサーチ会社に入社。主に、院内処方される医薬品を対象としたマーケティング・リサーチに従事する。子供の頃から宇宙に憧れを持っていたが、特に宇宙とは関係のない分野で就職。2019年に偶然リーマンサットプロジェクトの存在を知って参画し、人工衛星RSP-01の開発に関わる。
慶應義塾大学理工学部機械工学科、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻(MBA)修了。株式会社ブリヂストンにて世界最大の超大型タイヤ生産技術開発に従事。その後、株式会社ワークスアプリケーションズでの最先端IT技術の研究開発職を経て、現在は国内最大手のビジネススクールの教授およびディレクター、ベンチャー企業の役員などを務める。リーマンサット・プロジェクトでは広報・マーケティング全般を統括。
宇宙キャスターとして、日本テレビにて打ち上げライブ番組「Crew Dragon 宇宙へ」「はやぶさ2 地球へ 」など多くの宇宙番組を企画し放送。宇宙のライブ映像を使った実況はテレビ史上初の試みであったことから表彰を受ける。また、宇宙を楽しむコミュニティ「そらビ」を発足し、「めざせ!未来の宇宙飛行士講座」を主催。現在は宇宙教育に尽力。宇宙の街 日本橋を子供達が宇宙の最先端を学べる場にしようと活動している。