特別連載2021.11.15

平野陽三、宇宙へ行く。vol.11 9月22日:訓練二本立て。

photo & text: Yozo Hirano

出発まであと77日。

今日の訓練は大きく分けて二本立て。

 

一つ目は、想定外エリアに着陸した時の着替えトレーニング。海に着水したり、-50℃の極寒だったり、カプセルの外の安全が確保されていない場合を想定して、カプセルの中で宇宙服を脱ぎ、防寒着や防水着に着替える。

 

なんてことのない作業に思えるけど、ソユーズの中は想像をはるかに超えて狭い。体の向きひとつ変えるだけでも大変と言っていいほどに狭いカプセル内で、宇宙服から着替えを行うなんて想像もしていなかった。

 

まずはコマンダー役のインストラクターからお手本を見せてもらうことになったが、結局一番てこづったのは、何を隠そうこのインストラクターだった。彼は背丈が180cmほどあり、体格もいい。手足を十分に伸ばせず、伸縮のしない宇宙服を狭い船内で脱ぐのは本当に一苦労だった。身動きの取れない小さな箱の中で早着替えを行うイリュージョンマジックを思い出した。

 

そんなインストラクターの様子を見て本当に脱げるかと不安になったけど、意外なことに前澤と僕はなんなく宇宙服を脱ぐことに成功した。ガガーリンがそうであったように、ソユーズに乗るには背は低い方が有利らしい。ロシアの屈強な宇宙飛行士たちがよくつまずくというカプセル内での着替えトレーニングを僕たちはすんなりパスした。

 

午後からの二本目は、ソユーズのモックアップに入って打上げからドッキングまでのオペレーションをシミュレート。前澤と僕は操作を行うことなんてないだろうと思われているかもしれないけど(僕もそう思いたいところだけど)、意外にも操作や作業が少なからず任されている。

 

コマンダーの座席は真ん中にあり、僕たちより半歩下がった位置に座席が設置されている。それゆえにコマンダーは左右のボタンやバルブに手が届かないため、左右に設置されてあるシステムを使用する場合には、僕たちが実際に操作しなければいけない。すべて正確に覚え、宇宙服を着た状態で、本番のカプセル内でもパニックを起こさずに冷静に操作できるように、これから何度も反復して訓練を繰り返す。

 

朝9時からみっちり夕方18時まで。覚えることがたくさんで大変だけど、今日も充実した一日になった。

 

<次の記事>vol.12 9月23日:サバイバル訓練。

 

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