特別連載2021.11.26

平野陽三、宇宙へ行く。vol.41 10月22日:My宇宙服の着心地。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと47日。

先週、宇宙服の仕上がりを確認しに行ったZvezda(ズベズダ)に、今日もう一度訪れた。アルティチュードチャンバーと呼ばれる気圧をコントロールできるカプセルの中に入り、減圧した状態で2時間、宇宙服の中に酸素を送り込み、呼吸は大丈夫か、宇宙服に空気漏れなど異常がないかをチェックする。

 

まず改めてMy宇宙服を着てみて、ジャストフィットの着心地の良さにじんわりと感動する。着心地が良いとはいえ、命を守るスペーススーツなので着るのも着ているのも大変だけど、それでも訓練用のスーツに比べてフィット感が半端ない。

 

以前の部屋とは別の部屋に通されると、なにやら惑星ベジータにありそうな、白いカプセルの中に通された。カプセルの中には真ん中にシートライナーが一席。これももちろんオーダーメイドの僕専用の座席。これがまた宇宙服と完璧にフィットとして、体に掛かるストレスを最小限まで抑えてくれる。

 

すぐにベルトを装着し、まずはリークチェックから。スーツの胸の真ん中に付いている青いバルブを閉じ、ホースからスーツ内へと酸素を送り込む。スーツが膨らんで規定気圧まで達するまでの時間を計り、許容時間内に膨らめば空気漏れを起こしていないという確認が取れる。もちろんスーツは完璧に密閉されていて、異常がないことが確認された。

 

いざ、2時間の耐久チェックに入る。スーツ内を一定気圧に保ち、スーツに異常はないか、体に付けられたメディカルハーネスで僕の心拍等に乱れがないか等を同時にチェックする。ドクターに寝てしまっても平気?と聞くと、寝れるということは安全な状態がスーツ内で保たれている証拠、と返ってきたので、遠慮なく仮眠させていただくことにした。

 

結果、気づいたら僕は1時間半も眠っていた。宇宙服の外はゼロ気圧という空間で、宇宙服ひとつに身を任せて呑気に眠りこけていた。身体のどこにも痛みはないし、長時間のフライトにも耐えられそうなスーツとシートライナー、緊急事態にソユーズ船内が減圧しても、宇宙服の中には十分な酸素と気圧が確保されて守られることを、身を持って知った。

 

これにてMy宇宙服のフィッティングチェックは終了。次にこのスーツに会えるのはバイコヌールでの最終チェックのタイミングになる。それまで、素晴らしいスーツに恥じぬよう訓練に励みたいと思う。

 

<次の記事>vol.42 10月23日:レジャーという名の訓練。

 

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