特別連載2021.11.27

平野陽三、宇宙へ行く。vol.44 10月25日:緊急事態に備えて。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと44日。

今日のメイントレーニングでは、アンモニアガスがISS船内で漏れてしまった緊急事態を想定して、エマージェンシーマスクと呼ばれるアンモニア対策マスクを付け、ISSからソユーズへ脱出、そのまま緊急アンドックして帰還するというシミュレーションを行った。

 

濃度の高いアンモニアガスを吸引してしまうと、人体にとって非常に危険で、場合によってはすぐに死に至るという。アンモニアはUSOSセグメントでモジュールの熱を逃すための温度調整に使われていて、万が一それが漏れてモジュール内に侵入してしまった場合に備えてトレーニングしておく。アンモニアリークは、エマージェンシーレベル1〜5でいう「5」に位置付けられる。

 

マスクを装着した状態で、マスク内の空気を綺麗な空気に換気するテクニックを習う。呼吸の仕方、吐き出す量、マスクから汚染された空気の排出の仕方等、特殊なテクニックが必要とされる。先日の火災発生時のガスマスクほどではないにしろ、マスクの中は密閉されていて、動くとすぐに汗だくになった。汗をかくとフィルムが曇ってしまい、前がだんだん見えなくなってくる。緊急事態に視界が奪われてしまうと、さらに恐怖感が増してパニックになるだろうことが容易に想像できた。なので、そうならないための訓練である。また、マスクを使っているとガスフィルターの効果がなくなってくるので、お互いの新しいフィルターを交換するためにチームワークが重要になってくる。マスクをした状態では自分自身でカートリッジを交換することは難しい。緊急事態には3人セットで動くことがマストだ。

 

マスクを付けたまま宇宙服に着替え、ソユーズに乗り込んだときにはさらに汗だくになっていた。この日の訓練の前と後では1kg近くも体重が減っていた。今日の訓練ではそれだけ汗をかきエネルギーを使った(お腹を空かせたその晩、お腹いっぱい食べ過ぎて、すぐに元に戻ったけど)。

 

アンモニアリークが実際に起こることはまずないだろうと思うけど、万が一に備えて、今日はしっかりと訓練することができた。

 

<次の記事>vol.45 10月26日:低酸素トレーニング。

 

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