特別連載2021.12.02
photo & text Yozo Hirano
出発まであと22日。
最終試験2日目。昨日のISSに続いて、今日はソユーズに乗船して、打ち上げから着陸までの一連のシミュレーションを大勢のコミッションにモニタリングされながら実践する。
昨日と同じく、大勢の人やメディアに囲まれながら、サシャが伏せられた4つのカードから1枚を引き、そこに全員でサインをした。各カードには「6つの異常事態」が書かれているらしく、これも昨日と同じく、僕たちはどんな異常がいつ起こるのか知ることはできない。小さな異常から大きな異常まで、とにかく試験中に6つのイレギュラーが起こるらしい。ソユーズの前で記念撮影をし、簡単なインタビューに答えたのち、早速カプセルの中に入って打ち上げのスタンバイを行った。
いざ中に入ってしまえば3人きりで外も見えなくなるので、緊張することなく、自分たちのペース、いつも通りの手順で淡々とこなしていった。さすがに試験中は眠たくならないだろうと思っていたけど、ほどなくして試験中でも変わらず眠気が襲ってきた。この試験は眠気との戦いかもしれない。打ち上げからドッキングまで約4時間、そのあと1時間の休憩を挟んで、アンドッキングから着陸までまたさらに4時間。今日は合計で8時間もカプセルの中に入っていることになる。打ち上げ本番は、打ち上げ前の準備時間も含めてISSのハッチオープンまで8時間以上ずっと狭いスユーズ船内に乗っていることになるので、もしかするとその耐久試験も兼ねているのかもしれない。腰が死にそうになったけど、何事もなかったようになんとか乗り切った。
ドッキングの際に不具合が発生してマニュアルドッキングになったり、帰還の途中でモジュール内で減圧が起こったりと分かりやすい大きなアクシデントから、僕たちが気づかないうちにサシャが対処し終わっていたような細かいトラブルまで、計6つの異常をコンプリートしてソユーズ試験が終了した。サシャの指示や操作は的確だったし、前澤も僕もサシャの指示に従って全て正しく動くことができたように思う。
宇宙服からフライトスーツに着替え直し、昨日と同じく結果発表のホールへ移動する。昨日よりもさらに立会い人が増えているような気がする。サシャがタブレットのメモを見ながら、いつ何が起きて、どう対処したかのレポーティングをする。MCCと話しながら忙しくメインパネルを操作をしつつ、いつの間にタブレットに細かくメモしていたのかと本当に関心する。サシャのレポートのあと、コミッションからついに結果が知らされた。
結果は、、、満点に近い99点で合格。ほぼパーフェクトだったけど、一部MCCへの報告タイミングが遅れてしまったことを1点減点されたらしい。合格の瞬間3人で握手を交わし、会場からはたくさんの拍手をいただいた。
これで晴れて試験終了。僕たちは全ての試験にパスした。
1985年、愛媛県生まれ。2007年にZOZOTOWNを運営する株式会社「スタートトゥデイ」に入社、フルフィルメント部門の責任者として従事。現在は前澤友作氏のマネージャーと、「スペーストゥデイ」のプロデューサーを務める。