特別連載2021.12.04

平野陽三、宇宙へ行く。vol.63 11月21日:市街観光。

photo & text Yozo Hirano

出発まであと17日。

この日は朝食を食べたあと、コスモノートホテルの敷地内で国旗掲揚のセレモニーが行われた。これも伝統的な儀式の一つで、クルーによってバイコヌール最初の朝に国旗が揚げられる。

 

ホテルの外に出ると、例外なくロスコスモスやGCTCのお偉い方々、メディアの人たちがたくさん待ち構えていた。何名かの有難いスピーチを頂戴した後、いざ国旗を掲揚。サシャと僕でロシア国旗を、前澤と小木曽で日本国旗を、バックアップコマンダーのアレクサンダー(こちらも愛称はサシャ。ベテラン飛行士なので、僕たちはビッグサシャと呼んでいる。)がカザフスタン国旗を担当した。

 

ロシアの国歌? に合わせてするりするりとロープを引いていく。国旗掲揚なんて、小学校の運動会以来かもしれない。揚げ終わるとまた簡単なインタビューを受け、その後全員でまた集合写真を撮った。

午後からは、なんとバイコヌール市街を観光しに出掛けた。隔離中でも外出できるのかと思いきや、バスで街をぐるっと回って、バスの中から景色を眺めるだけだった。

 

バイコヌールの街は、ほぼ何もなく静かで物寂しい感じがするけど、スーパーマーケットや飲食店、公共施設などはいくつか見られた。ロスコスモス関連の施設もやはり多い。等間隔ごとに宇宙飛行士や宇宙に因んだ著名人の看板があるのも印象的だった。街の感じからして驚いたけど、バイコヌールには意外にも7万人以上の人が暮らしているらしい。元々宇宙基地のために建設された街で、カザフスタンに位置するのにロシア政府がその土地を租借し使用権を持っている行政区ということで、なんとも特別で複雑な感じがする。

 

今日はゆったりしたスケジュールで、バス観光のあとはホテルに戻り、ディナーの時間を待った。ホテルはというと、僕たちクルーの部屋は3階にあり、エレベーターがないため3階までは階段で上がる。3階は隔離フロアとされ、僕たちとドクター以外のスタッフは原則入れない決まりになっていて、厳格に隔離が行なわれている。

 

部屋は想像していたよりも全然綺麗で、特に不自由なことはなさそうだ。ソファとテレビ、冷蔵庫のある小さな部屋と寝室というシンプルな間取りで使い勝手がいい。トイレも水がちゃんと流れるし、お風呂はトイレとセパレートで、深めのバスタブもついている。だけど、お湯加減の調整が超絶難しくて、熱湯と冷水の間がなかなか見当たらない。しかもお湯を溜めたら茶色く濁っていたので、今日はシャワーで済ませることにした。

 

ディナーはというと、今回のバイコヌールもロシア同様、日本からのシェフを特別に帯同させてもらっている。サシャやビッグサシャも快く日本人シェフの料理を一緒に食べたいと受け入れてくれて、朝食とランチは現地シェフの料理を、ディナーは日本人シェフの料理をいただくという仕分けになった。

 

食事をする部屋も、クルーとドクターのみしか入ることを許されず、GCTCからサポートに来てくださっている20〜30名のスタッフは他の部屋に分かれて食事を取ることになっていた。

 

僕たちが食事をする部屋には2つの長テーブルがそれぞれ少し離れた距離にあるのだけど、ここでもプライムクルーとバックアップクルーは別々のテーブルに着席させられた。みんなで同じテーブルで食べようよと提案したけど、これも験担ぎを込めた伝統的な風習なのだという。

 

ディナーのあとはみんなで軽く運動をしようということになり、レクレーションルームに移動して驚愕した。なんとそこには卓球台があった。

これはバイコヌールでも寝れなくなりそうだ。

 

【参照】

・vol.42 10月23日:レジャーという名の訓練。

 

<次の記事>vol.64 11月22日:カザフスタンでの誕生日会。

 

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